
UA値に騙されるな!パッシブデザイン勉強会で青森の家をシミュレーションした結果
HOUSE ENが参加しているパッシブデザインの勉強会「PASSIVE DESIGN COME HOME」さまのYouTubeに出演させていただきました。テーマは「UA値に騙されるな!窓が大きくなると暖房費が高くなる?」。全国から参加した工務店が、同じ間取りを自分たちの地域の断熱仕様で計算し、青森(HOUSE EN)・山梨・出雲・名古屋の4地域で比べています。
結論:南の窓はLDK床面積の18%
結論から言うと、日射を取り込める南の窓の面積は、LDKの床面積の18%前後が最もバランスが良いという結果になりました。冬の暖房費だけを見れば窓が大きい20%が最も少なく、夏の冷房費だけを見れば窓が小さい15%が最も少ない。両方を足した年間の光熱費では、4地域すべてで18%が最少でした。18%と20%の差はわずかで、20%でも大きな不利はありません。
以前は「南の窓は床面積の20%」と教わることが多く、最近は18%でもよいのではないかと言われていました。ただし確かな根拠はなく、「勘でやっていた部分がある」とお話しています。そこで今回、温熱計算ソフト「ホームズ君」を使い、同じプランで窓面積だけを変えて計算しました。
計算の条件
- 間取りは4地域とも同じ。断熱材・窓の仕様は各社が自分の地域で実際に使っているものを入力
- 南の窓面積(日射が入る窓)をLDK床面積の15%・18%・20%の3通りで比較
- 南の窓には外付けルーバーやシェードなどの日射遮蔽がある前提で計算
- 比較したのは年間の冷房エネルギー・暖房エネルギーと、それを電気代に換算した光熱費
4地域の結果
動画内で示された年間の冷暖房費(概算)です。金額は動画のシミュレーション結果で、各社の断熱仕様が違うため地域間の金額差そのものを比べるものではありません。
| 地域 | LDK床面積の15% | LDK床面積の18% | LDK床面積の20% |
|---|---|---|---|
| 青森(HOUSE EN) | 55,594円 | 52,873円 | 53,528円 |
| 出雲(島根) | 54,866円 | 53,981円 | 54,518円 |
| 名古屋(UA値0.41) | 47,544円 | 42,558円 | 45,116円 |
| 山梨(UA値0.32) | 54,081円 | 48,494円 | 48,589円 |
結果を詳しく見ると、LDK床面積の15%を南面の窓とした場合は暖房エネルギーが増えて年間の光熱費が最も高くなりました。18%では冷房費が約12,200円、暖房費が約40,700円で、合計が最少。20%は18%とほぼ同じ金額でした。寒い地域ほど「窓を小さくして熱を逃がさない」と考えがちですが、計算上は南の窓から太陽の熱を取り込んだほうが暖房費は下がります。
なぜ窓を小さくすると暖房費が増えるのか
窓の断熱性能は外壁より低いので、窓を小さくするとUA値(外皮平均熱貫流率)の数字は良くなります。それでも暖房費が増えるのは、南の窓から入る太陽の熱が暖房の代わりをしているからです。冬の日中に日射が床や壁に当たって熱に変わり、その熱が室内を暖めます。窓を小さくすると、この「無料の暖房」が減ります。UA値は熱の逃げにくさを表す指標で、太陽の熱をどれだけ取り込めるかは含んでいません。数字を良く見せるために南の窓を削るのは、冬の光熱費で損をする選択になり得ます。
省エネと快適をセットで考える
人が感じる暖かさ(体感温度)は、室温と、壁・床・天井の表面温度の平均を足して2で割った値で近似できます。南の窓から日射が入ると床や壁の表面温度が上がるため、同じ室温でも暖かく感じます。今回の計算には体感温度は含まれていませんが、18%と20%で光熱費がほぼ同じなら、表面温度が上がりやすい20%を選ぶ考え方もありますが、家づくりは省エネと快適さをセットで考える必要があります。
断熱性能を上げると春秋の冷房が増える
名古屋の例では、南の窓を18%のまま外壁と屋根の断熱を強化し、UA値を0.41から0.26(断熱等級6と7の間)まで上げた計算も行われました。暖房費は年間約21,300円から約2,800円まで下がり、暖房はほとんど要らなくなります。一方で冷房エネルギーは増えました。断熱性能が高い家ほど、太陽高度が下がる春と秋に南の窓から入る熱が室内にこもりやすくなるためです。
この現象は「中間期の冷房負荷」と呼ばれ、高断熱を売りにする会社ほど語りにくい事実です。対策は、南の窓に外付けのルーバーやシェードを設けて、夏と中間期の日射を遮ることです。今回の計算は日射遮蔽がある前提で行われており、遮蔽がなければ差はさらに広がります。
なお、この断熱強化で減る光熱費は年間約15,000円、30年で約50万円です。付加断熱の工事費を考えると金額だけでは元が取れません。断熱等級を上げるかどうかは、光熱費ではなく快適さと予算のバランスで決めるものだ、というのが勉強会の見方です。
日照の少ない地域でもパッシブデザインは有効か
出雲は冬の日照が少ない地域で、参加者自身が「自分の地域ではパッシブデザインが合わないのではないか」と不安を持っていました。結果は他の地域と同じく18%が最少で、日照が少ない地域でも南の窓と日射遮蔽をきちんと設計すれば効果があることが示されました。青森・八戸も冬は厳しいものの、太平洋側で晴れる日が多く、パッシブデザインが効きやすい地域です。
18%は万能の数字ではない
今回の4地域では18%が最適でしたが、「地域ごとに、自社の断熱仕様と窓の仕様を入れて計算してから決めるべきで、計算せずに一律の数字を言うべきではない」ということです。山梨のように18%と20%がほぼ同じ地域もあります。窓の向き、軒の出、隣家の影、ガラスの種類で最適値は動きます。
HOUSE ENの家づくり
HOUSE ENは標準仕様をあえて設けず、パッシブデザインを設計の土台にしています。今回の結果は、八戸の敷地ごとに日射・通風・断熱を計算して窓の大きさと位置を決める、という普段の進め方を裏づけるものでした。
- 南の窓はLDK床面積の18〜20%を目安に、敷地の日当たりを見て決める
- 南の窓には外付けの日射遮蔽を組み合わせ、夏と中間期の冷房増を防ぐ
パッシブデザインの考え方と、断熱等級・UA値との関係はパッシブデザインと住宅性能のページで解説しています。八戸市や周辺で、敷地に合わせた窓計画を検討したい方は、公式LINEからご相談ください。



